「パナマ文書」の遺した爪痕

2016年5月、「パナマ文書」に記載されていた21万4千社におよぶ法人ならびに関連する個人の実名が国際調査報道ジャーナリスト(ICIJ)のホームページ上に公開されました。リストには、名だたる企業の役員や大株主のほか、一国の指導者の名前もが含まれており、世界に波紋を呼びました。
富裕層や多国籍企業によるオフショア・タックスヘイブンの利用実態が明るみに出る中、悪質な課税逃れに対する国際的な課税ルール作りに向けて世界が動き出しています。





1. 「パナマ文書」問題の本質とは?
日本をはじめ世界の多くの国では、タックスヘイブン対策税制など、国境をまたいだ租税回避を防止するための法規制が講じられており、タックスヘイブンの利用自体が違法とされることはありません。 
パナマ文書が示すタックスヘイブンの本質的な問題の所在は、所有する法人や金融口座を「匿名」とすることにより、実質的所有者が誰であるのかを秘匿できる点にあります。世界一のオフショア拠点である英領バージン諸島をはじめ、多くのタックスヘイブンで公に普及している‘ノミニー’(名義借り)や‘カストディアン’(管理保管者)を利用することにより、「真の所有者」を表に出すことなく匿名企業・匿名口座を持つことができます。法人を複層化すれば、秘匿性はより一層高まります。  
こうした秘匿企業・資金を用いた匿名取引が、法の趣旨を超えた租税回避やマネーロンダリングなどの不正の温床となり、さらにはテロリストやマフィアなど金融制裁対象者による悪用を引き起こす一因となっています。パナマ文書の解析が進むにつれ、「真の所有者」による不正の実態が顕在化していくことになるものと思われます。



2. オフショア問題に対処するための国際的動向
OECDやG20を中心に、多国籍企業や富裕層の「課税逃れ」を防止する国際共通ルール作りが本格化しています。OECD租税委員会は、2016年6月末に京都市で開催された会合にて、悪質なタックスヘイブンの基準を策定しました。各国の税務当局間にて行う毎年の銀行口座の情報交換に非協力的な国などを「悪質」と認定して「ブラックリスト」化を行い、該当国・地域への所得移転を規制する制裁措置を科すことが検討されています。
会合では併せて、BEPS(税源浸食と利益移転)規制を確実に実施するため、タックスヘイブンで稼いだ所得に対して本国側で適切に課税できるようにすることなどを盛り込む国際共通ルールの整備が議論されました。年内には100ヶ国・地域以上が参加の上、各国の国内法による課税強化が図られる見通しとなっています。
ただし、これらの施策によって表面上の取引を取り締まったとしても、上述の匿名による「実質所有者問題」にメスを入れない限り、問題の根源的な解消は難しいと思われます。パナマ文書問題の当事国であるパナマ政府は、各国と租税情報交換協定を締結する意向を示しており、今後、他のオフショアにも波及していくことになるものと思われますが、開示される情報に実質をいかに反映させ、法規制にどこまで実効性を持たせられるかが、本質的な問題解決のためのカギとなります。



お見逃しなく!
日本においては、多国籍企業や富裕層に租税回避策を指南する税理士やコンサルタントに対して具体的スキームの開示を義務付け、拒んだ場合には罰則を科す米国などと同様の新たな制度が2018年度より導入される予定とされています。
多国籍企業にとって、グローバル・タックス・ミニマイゼーションは重要な経営戦略の一つですが、国際的な課税強化の動向に注視の上、不測の課税リスクに慎重に備える必要が生じるものと思われます。

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