会計基準の違いから生じる影響

わが国におけるIFRS任意適用会社数が順調に増加していますが、日本基準とIFRS・米国基準との主要な差異の1つに、のれんの償却の有無があります。各社の採用する会計基準を確認せずに表面上の決算数値だけを比較すると、間違った理解をしてしまう危険性があります。



1. のれん残高・費用化額はどれだけ違うのか
企業会計基準委員会は、日米欧豪の主要な株価指数(米:S&P500、欧:S&P Europe350、日:日経225、豪:S&P ASX200)を構成する1,000社以上のデータを調査し、2016年9月にリサーチ・ペーパー第2号「のれん及び減損に関する定量的調査」を公表しました。当該リサーチ・ペーパーでは、IFRS(のれんは減損のみ)を採用する欧州企業及び豪州企業、米国基準(のれんは減損のみ)を採用する米国企業、並びに日本基準(のれんは償却及び減損)を採用する日本企業ののれんの額等を調査しています。以下では、その調査結果の一部をご紹介します。



2. のれんを認識していた会社の1社当たりののれんの金額と、純資産に対するのれんの割合

 米国欧州豪州日本
2010年4,745(32%)5,362(31%)970(21%)299(4%)
2014年5,582(32%)5,303(28%)983(17%)398(4%)
(単位:百万米ドル)
M&Aが活発か否か等の要因によっても影響されますが、明らかに日本基準よりもIFRS・米国基準の方が多額ののれんを計上していることが分かります。規模が大きい会社ではのれん残高が大きくなる可能性もあることから、のれんの絶対額だけでなく純資産に対する割合も括弧書きで示しましたが、同様の結果となっています。
個別企業ごとに見てみると、2014年において純資産の50%以上の金額に相当するのれん残高がある会社は、米国:155社、欧州:107社、豪州:27社、日本:0社となっています。なお、IFRSを任意適用している日本企業83社(2016年3月期までの直近の状況)を太陽グラントソントンが調査したところでは、純資産の50%以上の金額に相当するのれん残高がある会社は13社となっており、会社が採用する会計基準によって企業の財政状態が大きく影響を受けることが窺えます。



3. のれんの費用化の程度
 米国欧州豪州日本
2010年1.2%1.0%0.9%10.0%
2014年0.8%1.2%1.3%10.2%
前年末ののれんを費用化(減損及び償却)した割合を見てみると、明らかに日本基準の方がIFRS・米国基準よりも費用化していることが分かります。



お見逃しなく!
採用する会計基準によってのれん残高及び費用化額に明確な差が生じています。日本基準・IFRS・米国基準が混在し、かつ、IFRS採用企業のウェイトが無視できない程度に高まってきているわが国においては、同じ日本企業であっても、まずは採用している会計基準を確認することが大切になってくるでしょう。

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