人気ドラマ『人民の名義』から垣間見る中国の”裏”

人民日報は、2017年4月5日の紙面で、中国のテレビドラマ「人民の名義」が総視聴回数2.2億という異例の大ヒットを記録したことを伝えました。全52話で構成された本作品は、中央政府の官僚が、国営企業、金融機関および民間企業と結託し巧妙な手口を使った国有資産の横領と贈賄事件を解決する過程を痛快に描いた「反腐敗大型作品」であり、中国で湧き上がっている反腐敗キャンペーンを連想させる内容です。
今回は、このドラマの中から日系企業が巻き込まれるおそれのある裏取引の例を紹介します。



ドラマにある表取引と裏取引
民間企業の大風集団は、京州商業銀行からの融資更新手続き期間中、他の民間企業である山水集団から6000万元のつなぎ融資を受けました。京州商業銀行は、大風集団からリベートを受け取り、契約の更新を事前に約束していたにもかかわらず、突然融資を打ち切ったため、大風集団は山水集団からの借入を返済できなくなりました。その結果、山水集団は、返済不履行の代償として担保である大風集団の株式を取得することとなりました(表取引)。
山水集団は、株式取得後に時価総額10億元の土地に建設されている大風集団の工場を取り壊して、政府へ売却しようとしました。政府公安局による強制立ち退きに反発した大風集団法人代表は、山水集団に対して訴訟を提起しましたが、敗訴。事態は従業員による集団暴動にまで発展しました。
なぜ京州商業銀行は突然融資を打ち切ったか、なぜ山水集団は実質10億元相当の資産を6000万元もの低額で取得できるのか、中央政府から派遣された検察院反腐敗局チームの調査により、裏取引の全貌が解明されました。山水集団は中央政府の幹部とその派閥である多数の公務員に資金を提供する「裏金庫」であり、中央政府の官僚の元部下が法人代表を務める国営企業からの国有資産の不法流用の受け皿でもあったことが判明しました。山水集団の代表は京州商業銀行と結託して、融資打切りという一見合法的な取引を利用して、大風集団の株式を著しく安価で取得することが取引の真の目的(裏取引)だったのです。



見直すべき過去の取引慣行
大風集団の代表者は、従来の中国での取引慣行からリベートを支払うことや山水集団のような政府関係色の強い民間企業と取引することは、商売を円滑に行うための当然の手段だと思っていましたが、結果的には贈賄罪と公共安全危害罪を問われ、15年の実刑判決を受けました。
「人民の名義」の放送により、民間企業だけでなく、一般市民までもが公務員の腐敗行為を起因とした犯罪に巻き込まれないよう、社会の緊張は一気に高まりました。中国の日系企業も、「グレーな取引」や「あやしい事象」が錯綜している複雑な環境の中で、大風集団が巻き込まれた裏取引を教訓として、過去の取引慣行を見直す必要があります。
終始クリーンな合法経営を貫くために、コンプライアンス遵守の意識と知識が必要です。例えば、直接または間接的な商業賄賂の要求に応じない、地元の金融機関や政府関係の強い企業と取引する際に、独立した財務コンサルティング会社を介入させるなど、テクニカルな対策をとるのも一つの方法です。



お見逃しなく!
中国には、「家庭内のいざこざは外には漏らさない」(家醜不可外揚)という諺があります。「人民の名義」の人気の理由の一つが、そのリアリティです。このようなドラマの放映が中国で規制を受けていない事実は、習近平政権の反腐敗運動の決心を示すものとも受け止められます。今後、国民の監視のもとクリーンな経営環境が築かれることが期待されます。

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